海の母星〜

第3部・シュラバ

ジァン・梅原

−その25−

モモたちは、キララ王国に一週間も滞在した。
シュラバの回復は若いだけあって早かった。そして、三日目には王国の医師団の許可があったので、もう出発出来る状態にあった。
しかし、モモたちはその後、飛行訓練を受けたのだ。

キララ王国は、屏風のようにこの大陸を真っ二つに分断し、その頂上を大気圏外に突き出してそそり立つ山脈の頂上付近に位置する台地にあった。
したがって王国の東のはずれは山の下り斜面が続き、その先は切り立った崖になっていて、それが山脈の中腹まで続いていた。
そこから見下ろすと、遥か地平線まで見渡す限り砂漠が広がっていた。

このままだと、モモたちが東にある聖地「ユウ」に向かうためには、また何日もかかって危険な山脈を下って行かなければならないのだ。

ところが、キララ王国の兵士たちはめったに危険な未開の山歩きはしなかった。
この王国の人々は、砂漠からこの山脈にぶつかって吹き上げてくる上昇気流を利用して凧のような乗り物を開発していた。
それは、二本の軽いポールを交差させ、その間に強い布を三角に張り、その下に支柱をつけた1人〜2人乗りの飛行体、ハングライダーだった。

キララ王国の人々はこのハングライダーを操り、王国と上昇気流がある山脈沿いの地方を行き来しているのだ。
もちろん、モモたちが山脈を登って来るのもとっくに見張られていたことになり、更にモモたちが、吹雪の中で動けなくなったところで援助の手を差し伸べてくれたのだった。

クラニョンの指導でモモたちは何度もコニーデ型の火山「キララ山」に登ってはハングライダーの滑空訓練を行った。
なにしろ、モモたちは2000パーセク(1パ−セク=1.2メートル)の山脈から離陸して、出来るだけ砂漠の遠くまで飛行するつもりだったから、訓練には力が入った。
もちろん、この高度から墜落すれば生命はない。

「シュラバ、もうだいじょーぶなようだね」
先に着地して待っていたタワケモノが着地点に降り立ったシュラバに声をかけた。
「ありがとうっ!、もうだいじょーぶよっ!」
シュラバが明るく答える。
「あーあっ! フーフモンはいいなぁっ」
ケンハピーが二人をひやかした。
「あはは‥‥」
タワケモノとシュラバがケンハピーを見て、それから顔を見合わせて笑った。
「あー、やだやだ、二人の世界に入っているよ」
ケンハピーが両手を広げてカノンを振り向いた。
「ケンハピーさんには理解出来ない世界ですね」
カノンがポツンと答えた。

そして、いよいよモモたちがキララ王国に別れを告げ、聖地「ユウ」に向かう日がやってきたのだ。

第3部−完−

しょーせつのINDEXにもどる

TOPにもどる