海の母星〜

第3部・シュラバ

ジァン・梅原

−その6−

「そうだ、シュラバは一度は "くらげうみうし" に食べられたからな」
タワケモノがおかしそうに言った。
「ええっ!、あなたは "くらげうみうし" に包まれたのっ!」
ムシドラが驚いた表情で言った。
「そう、でもタワケモノが助けてくれたわ。もっとも "くらげうみうし" の熱い体液を浴びちゃいましたけど」
シュラバが不審そうにムシドラを見て言った。

「すぐにこちらにきて、シャワーを浴びるのです」
ムシドラは急いでカウンターから出てくると、左手の奥にあるドアーまで行ってシュラバを招いた。
「あらら、あたくしはすっぱだかになって、ケンハピーに見られるのなんてごめんですよ」
シュラバは立ち上がりながらケンハピーをちらっと見た。
「シュラバさん、そんなことはしませんって‥‥‥。何だかただごとじゃない様ですよ。直ぐに行った方がよろしいのでは‥‥‥」
ケンハピーが不安そうに言った。

「そう、ただごとじゃないのよ。 "くらげうみうし" の毒はそれはとても恐ろしくてよ。 まだ、ここに生きていることがもしかして奇跡だったりしてよ」
ムシドラがシュラバをうながした。
「えっ!、そうなの !」
シュラバはあわててムシドラが示すドアーに飛び込んだ。
「他に "くらげうみうし" に包まれた方はありませんか」
ムシドラがたずねた。
「あっ、ドーケシがいる」
モモが言った。

「ホェホェ〜、ボクだったらだいじょーぶだよ。すでに毒に侵されたボクの細胞は入れ替わっていると思うよ」
暖炉の前に寝そべっているドーケシが首を上げて言った。
「そうね、この生き物だったらそうかもね」
キルミーがぴょんとドーケシの背中にあがった。
「ホェホェ〜、重いよぉ〜ん」
ドーケシが言った。
「ちょっと、ボクが調べるあいだじっとしていてくれない?。なんだかキミ、身体の具合がおかしいよ」
そう言いながらキルミーはドーケシの身体を調べはじめたが、直ぐにビクッと身体を止めた。
「あああーっ!、やっぱりぃ〜っ!、ムシドラーっ!、タンポポっ!」

「あら、それは大変」
ムシドラがシュラバが入ったドアーの前からドーケシに駆け寄った。
「ムシドラ、ここにタンポポの芽。 これはもう元にもどらないね」
キルミーが、今やすでに緑の毛の間から頭を出しているキラータンポポの芽を差しながら言った。
「ホェホェ〜。もう手遅れだよ〜ん」
ドーケシが悲痛な顔をして答えると、前にのばした足の上に頭をもどした。
みんなドーケシとその前にいるムシドラを囲んだ。

第3部−その7−に続く


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