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海の母星〜
第3部・シュラバ |
ジァン・梅原
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−その8−
器用に頭でドアーを押し開けて中に入ったキルミーが叫んだ。
「あーっ!、だれかきてくれぇーっ!」
みんな一度にワッと立ち上がり、ドァーの中に走り込んだ。
ドアーの中は、正面に広いプールと、右手に出しっぱなしになったシャワーがあった。
そして、その下にシュラバは裸で倒れていた。
「シュラバっ!」
タワケモノが駆け寄ってシュラバを抱きかかえた。
モモは、ドアーの横にあったバスケットからタオルケットを取り出すと、裸のシュラバにかけた。
「こちらへ」
ムシドラが、長い金髪からポトポトと水をしたたらせているシュラバを抱きかかえたタワケモノを、二階のベットがある部屋に案内した。
「シュラバっ!、シュラバっ!」
モモがベッドに横たえられたシュラバの両頬をピタピタとたたいて叫んだ。
「さあ、殿方はひとまず下のシャッフルにお戻りなさいな」
ムシドラが言った。
「いや、オレは残る」
タワケモノが言った。
広間に戻って、カノンが悔しそうに言った。
「これは私のミスだ。
"くらげうみうし" の毒を軽く見すぎた。
これは私の情報収集量が不足したせいだ」
「カノンさんのせいじゃありませんよ」
ケンハピーがぬれた床を拭きながら言った。
「
カノンさんはボーイスカウトのリーダーもしていたと聞いていますので、モットーの『そなえよつねに』は徹底していますし、判断はいつも正しいので、ボクは尊敬しています」
「でも世の中全て計算通りにはいかない‥‥と、村の長老が言っていました。ボクは、カノンさんが完全ばかり求めすぎているのではないか、と思います」
「ありがとう」
カノンが答えた。
その後、二人は放心したようにしょんぼりと椅子に座っていた。
寝室では、タワケモノ、モモ、それにムシドラが戦場さながらの中にいた。
意識不明だったシュラバは、ムシドラが口移しで与えた毒消しで一時意識が戻ったかに見えたが、ひっきりなしに襲ってくる苦痛にのたうちまわっていた。
タワケモノは、ベッドから落ちないようにシュラバを押さえつけ、ムシドラとモモは皮膚に染み込んだ
"くらげうみうし"
の毒を抜き取るため、シュラバの全身にヒトデナシの油を塗り込まなければならなかった。
しかし、シュラバが暴れるので三人とも汗びっしょりの上、油だらけになっていた。
カノンとケンハピーが部屋に呼ばれて入った時、シュラバは昏睡の中にいた。
「シュラバさんの具合はどうですか」
ケンハピーが心配そうに聞いた。
「毒はほとんど取れたので、後は回復を待つだけね」
ムシドラが答えた。