海の母星〜

第3部・シュラバ

ジァン・梅原

−その10−

  「そうね、ムシドラさんにお願いしましょう、ムシドラさん、もう一日ここに滞在させていただいていいでしょうか」
モモはカウンターでニコニコしているムシドラにたずねた。
「かまいませんのよ、ここは次元の狭間にありますから‥‥。シャッフルを出る時は、みなさん、ごいっしょに出られたほうがよろしいと思いますわ。そうでないと次にお会いするとき、それぞれの方々の間に、時間が大幅にズレてしまうことになりましてよ」
ムシドラがにこやかに答えた。

そう、たしかに、ここ、シャッフルは次元の狭間にあったから、時間の流れは通常世界とは違うのだ。
今も、モモたちはガンツリーり森のはずれにあった「シャッフル」の過去に来ているのだ。
そして、ムシドラもキルミーも、モモたちに会うのは初めてだと言った。
ほんの「きのう」会ったのに‥‥‥。

今、シュラバを養生のため、ここに残せば、次にシャッフルに来た時‥‥、もし、遥か未来のシャッフルしかなかったら‥‥、シュラバにとって、長い長い時が過ぎているかも知れないのだ。
「あたしならヘーキだよ。直ぐに一緒に行けるよ」
シュラバが言った。

「ヒメ、もう一日、ここで待機しましょう」
カノンがちらっとシュラバを見て、モモに同意を求めた。
「そうね。みなさん、そうしましょっ」
モモがみんなに言った。

「それでは、"くらげうみうし"との戦いで武器がボロボロになっているので、今から手入れをすることにします。シュラバの武器の手入れは私がしますので、出しておいて下さい」
カノンが立ち上がって言った。

「いや、シュラバの武器の手入れはオレにやらせてくれ。いいだろ、カノン」
タワケモノが言った。
「そうですね‥‥、それがいいですね。 じゃ、タワケモノ公爵、お願いします」
カノンはなぜかにこっと笑った。

「本当にだいじょーぶだってば」
シュラバが言った。
「シュラバ、カノンの言うことを聞くんだな。彼は絶対に間違ったことは言わないから‥‥」
タワケモノがシュラバをたしなめた。

−その11−に続く


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