海の母星〜

第3部・シュラバ

ジァン・梅原


−その14−
「ユウだ」
タワケモノの言葉に、子どもたちの間に声にならないざわめきが広がった。
「この人たち、ユウに行くんだって」
「ユウだって」
「じゃ、メシアの人々‥‥」
「すると、あの動物がドーケシ」
「上にいる方がメシアのモモさまだ」

子どもたちは一斉に、ドーケシの上に乗っているモモに手を振って、口々に叫んだ。
「はいりほ〜モモ」 「はいりほ〜!」

「ヒメ、ここはひとつ威厳を持って答えるべきですよ」
ドーケシの横を歩いているカノンが言った。
「わかったわ」
モモはニッコリ笑って子どもたちに手を振った。
「ワーッ」
子どもたちはいっせいに歓声を上げた。
兵士たちは子どもたちが一行に殺到しないように、さっと散開してモモたちを囲んだ。

「メシアの一行だって」
「ユウに向かう途中だって」
街行く人々の間にもざわめきが広がり、モモたちを取り囲んだ。
「はいりほ〜モモ」 「はいりほ〜」
人々が口々に呼びかけて手を振る。

ドーケシの上の、長い金髪を風になびかせたモモは、白い皮製の簡易甲冑に白いローブをまとっただけのワイルドな姿だったが、呼びかける人々に答えて手を振るさまは、どこか気品があった。
そして、一行が大通りを進み、堀に囲まれた城の門に着く頃になると、モモたちは大群集に取り囲まれていた。

ガラガラとはね橋が降ろされると城門が開き、人々はモモたちと一緒に城の中に入った。
兵士たちは、それを別にとがめようともしなかった。

城の中に入ると、真ん中は街中の人々を収容しても余るような大きな広場になっていた。
そして、まわりを取り囲んで様々な石造りの建物があり、遠く、正面に5段ほどの横幅の広い石段があって、その上に舞台のようになった広場があった。その後ろにはひときわ高い石造りの建造物があった。
モモたちを取り囲んだ兵士たちは、一行を正面の建物に誘導した。

舞台の正面の大きな扉が開き、中から金色の王冠をかぶり、真紅の衣装を着た一人の女性を真ん中にして、白いローブを着けた人々の一団があらわれた。
「はいりほ〜、レミ」 「はいりほ〜」
群集がいっせいに手を振って口々に叫んだ。
モモたちは兵士に誘導されてまっすぐ進み、奥行きも広い石段をゆっくりと登った。
「はいりほ〜、レミ」 「はいりほ〜」
群集は石段の前にとまって手を振った。

第3部−その15−に続く


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