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ジァン・梅原 |
−その15−
石段を登りつめると、そこは広い広場になっており、正面の一段上に石の椅子があって、そこに金色の冠をかぶり、真紅の長いローブをまとって、金色の棒を持った女性がにこやかに座っていた。
兵士たちのリーダーが手で合図してモモたちを止まらせ、兵士たちはリーダーだけを残してさっと引き下がっていった。モモはドーケシから降り、ドーケシはその場でうずくまった。
「よくいらっしゃいました。私はキララ王国の女王レミよ」
王座にすわった女性がにこやかに微笑んで言った。
不思議なことに、その女性の声は広場にひびきわたった。
「はじめまして、私はシャア帝国第三皇女のモモです」
モモの声も広場に広くひびきわたった。
「はいりほ〜モモ、はいりほ〜」
石段の前まで来ている群集の声が広場にひびきわたった。
この広場はなんらの拡声装置(スピーカー)もないのに、声が大きくひびきわたった。
何でも調べなければ気が済まないカノンも、『どういう仕掛けになっているのだろう』と思ったが、この際この問題は重要ではない。
「ええーっ、ここがキララ王国‥‥」
タワケモノも一瞬、感動に包まれた(*注 )が、話を先にすすめたい。
「あなたがたは、この惑星マリンを救うために、聖地"ユウ"に向って旅をしていると聞きました。ゆっくり休んでいってくださいね」
女王レミは、にこやかにモモたちに言った。
「はい、ありがとうございますレミ女王。 また、ここにいますシュラバを助けていただいてありがとうございました。深く感謝いたします」
モモはていねいにお礼を言った。
「クラニョン、何かあったの」
女王レミは、モモたちの横に立っている将校にたずねた。
「はい、シュラバさんの生命の火が消えたので、キララを一本差し上げました」
一緒に立っている、クラニョンと呼ばれた兵士たちのリーダー(将校)が答えた。
「そう、役に立ってよかったね」
女王レミはにっこり笑って続けた。
「‥‥キララは生命の火です。そして、若さも与えてくれるのです。 だからキララ王国には病気の人や、お年をとった人はいないのですよ‥‥」
モモは、群集の中に老人が一人もいないことに気がついた。
「でも、キララ王国の外に出ると、キララは永遠の生命ではなくなるのね。だから、私なんかこの王国の外に出て、ヴィーナス(惑星マリンの太陽)が7回のぼると、たちまちおばあちゃん」
女王レミは少しおどけて言った。
第3部−その16−へ続く
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