海の母星〜

第3部・シュラバ

ジァン・梅原

−その17−

「ええ、こちらへどうぞ」
一同はクラニョンにしたがって壮大な建物の回廊を歩き、広い庭園に出た。
「クラコさん、ちょっと聞きたいことがあります」
歩きながらカノンが聞いた。
「さっきの広場、声が拡大されて良く聞こえましたね。どんな仕掛けになっているのですか」
やはり、カノンは何でも知っておかないと気が済まないようだ。

「それが、私たちもよくわからないのです」
クラニョンが立ち止まって振り返ったので、みんなもクラニョンを取り囲んで立ち止まった。
「実は、ここは私たちが最初に作った街ではないのです。言い伝えによると、私たちがここに来る前から、ここには古代遺跡があったそうです。そして、私たちのはるかな祖先がここを発見した時、この古代遺跡のいろんな仕掛けは、誰もいないのに動いていたと言います‥‥」
クラニョンはちょっと間をおいて、みんなの目を見た。

「それは実に興味深い話です。 あなたがたがここに来られたのはいつ頃ですか」
カノンが尋ねた。
「それがはっきりしないのです‥‥。 私たちはキララのおかげで大変長寿を保っているのですが、街で一番の長老に聞いても、そこのところがわからないのです。おかしいでしょ‥‥」
クラニョンは両手を広げちょっと首をすくめた
「 でも、私たちはここで、その仕掛けを動かしているエネルギーすら判っていないのに、今、それをそのまま使って生活しているのです」
クラニョンが歩き出したので、みなもそれにしたがった。

広い庭園はよく手入れされており、白い石で囲まれた花壇が行儀良く配置され、その中には熱帯性とおもわれる植物の色とりどり花が咲いていた。
そして、庭園のほぼ中央と思われるところに、大きな噴水があった。

「あ、きれいっ!」
モモが思わず声をあげた。
それは本当にきれいだった。
噴水はキラキラとうすいオレンジ色に輝いて、大理石で縁どられた円形の池の中央に噴きあがっていた。
池の中の水も、うすいオレンジ色に光っていた。その水は自ら光をはなっていたのだ。

白いローブを来た数人の少年たちが、長い柄のひしゃくで水すくって首の長い大きな壷に入れ、その壷を数人のやはり白いローブを着た少年たちが運んでいた。
「もう何千年も昔から、この泉はキララを湧き出し続けているのです。そして、そのキララは何千年も昔の方法で汲み取られ、王国の人々全てにひとしく分けられ続けているのです」
そばで、クラニョンが説明する。

モモたちはうっとりと、この噴水とその前で優雅に働く古代衣装の少年たちにみとれていた。
キラキラと自ら光をはなちながら噴出している水の流れは、中にピカピカと星を含んでいるようであり、光の洪水でもあった。
「でも、最近、噴水の様子がおかしいのです。少し勢いが弱くなったような‥‥、これも、この惑星マリンの滅びの兆候でしょうか‥‥」
クラニョンが少し声をひそめて言った。

「タワケモノ、さっきレミ女王の前で言ったこと、本気なの」
ふと、シュラバがタワケモノに聞いた。

第3部−その18−に続く


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