海の母星〜

第3部・シュラバ

ジァン・梅原

−その19−

「この惑星マリンの気候が、もとにもどるのが一番なんですが‥‥。とにかく、スローンは生命がある様な、ない様な‥‥、彼らのことはあまり良く判っていないのです」
「それはまた、やっかいな相手だな」
タワケモノが顔を引き締めた。
「でも、以前彼らがやってきた時‥‥、小さな群れにもかかわらず被害は甚大でしたが‥‥、その時、彼らが電撃に弱いことが判りました。それから、兵士たちは皆、電撃を発する剣を持って、命がけでスローンの群れに立ち向かい、群れの進路をかえるのです」

「何かお手伝い出来ることはありませんか」
モモが言った。
「それはありがたいっ!、ぜひカノンさんにお手伝い願いたい」
アラはたのもしそうにカノンを見た。
「カノンさんが優れた指揮官と言うことは、キララ王国でもよく知られています。ぜひクラコと一緒にスローンを追い払っていただけませんか」

「よし、そうと決まったら、どこに行けばいい?」
タワケモノが言った。
「こちらへ」
参謀将校のアラは、白いローブをひるがえして走りだした。
「シュラバ、ヒメをお願いします。ケンハピーくんもヒメを守って下さい」
カノンは手早く指示をすると、すでに走り出したタワケモノの後を追った。

しばらくすると、カノンたちが消えた回廊から、白い将校服姿の2人の少年が走り出てきた。
「私たちはレミ女王付きの将校です。 こちらへどうぞ」
2人の少年はモモたちを誘導した。
「私たちもお役に立てれば」
モモが言った。
「はい、ですからこちらにおいで下さい」

少年たちは回廊を渡ってモモたちを一つの部屋に案内した。
そこはガランとして何の調度品もない部屋だった。
「おおっ、これはっ‥‥」
ケンハピーが頭上を見上げて言った。
頭上はるか遠くに小さい四角の穴があって、そこから外の光が見えた。
そこは煙突のような頭上が抜けた部屋だった。

「動きます」
少年の一人が言った。
部屋の、床と壁との境目が明るい緑色に輝くと、グーンと加速がついて、モモたちは床に乗ったまま煙突の中を上昇し始めた。頭上に見えていた明るい小さな四角の穴がどんどん近づき、そして加速がゆるみ、数十秒後にモモたちは高い塔の上に出ていた。
塔の上から見ると、足元には堀に囲まれた城全体が広がり、開放された城門にぞくぞくと避難する王国の人々が押し寄せ、城門を通った人の波は広場に集結しつつあった。

そして、この塔の真下、さっきモモたちが女王レミに謁見した広場の前には、キラキラと甲冑に身を固めた兵士たちが集結しつつあった。
その兵士たちの前に、数人の将校に混じって、金髪の長い髪と白いマントをひるがえしているカノンの姿と、相変わらず派手な服装をしているタワケモノの姿があった。

第3部−その20−に続く


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