海の母星〜

第3部・シュラバ

ジァン・梅原

−その20−

やがて、兵士は二手に分かれ、列を作って城門に向った。
「はいりほ〜、はいりほ〜」
群集は11時と8時の方向に向って出撃する兵士たちを歓呼で送る。

「ケンハピーさん、これを」
モモたちに付き添っている少年将校の一人が、虹色にキラキラ光る大きな弓を差し出し、もう一人がぎっしり矢が詰まった矢入れを差し出した。
ケンハピーが弓矢の名手と言う情報も、キララ王国は知っている様だった。
「オッケー」
ケンハピーは大きな弓を受け取ると、一本の矢を矢入れから引き抜いた。
その矢も虹色にキラキラ光っていた。
「この弓の射程は」
ケンハピーは、何の材質か判らない弓をしげしげ見ながら言った。
「弓、矢ともに、特殊な能力を持っていますので、約4000パーセク(約4800メートル)あります」
少年が答えた。

「一本、射ていいかな」
ケンハピーが尋ねた。
「どうぞ、でも電撃の破壊力が大きいので、遠くに向けて下さい」
矢入れを持った少年が答える。
ケンハピーは弓を構え、城外のはるか遠くにある、ひときわ大きい木の梢をねらっで矢を放った。
矢はヒョオーと風切り音を残して木に向った。
バシッ! 矢は見事に大木の梢をヒットし、木の上部が火花を散らして吹き飛んだ。
ドオーン!後から音が追いかけて来た。

「ワアー、ワァーっ! ケンハピー、ケンハピー!はいりほ〜っ!」
矢の風切り音に反応した群集が矢の行方を追い、いっせいに手を振り喚声を上げた。
ケンハピーは照れた様に人々に手を振った。
「ヒメ、この武器の威力はすごいものがあります。これさえあれば恐いものなしですね」
弓を持ち上げてじっと見つめていたケンハピーが、モモを振り返って言った。

塔の上からは、城から出て11時の方向に向かう兵士たちが、白いマントのカノンを先頭に、二列になって麦畑の中を進むのが見えた。
また、8時の方向には、のどかに白い噴煙を立ち上らせているコニーデ型の火山があり、そちらの方向へも二列になった兵士の列が進んでいた。
こちらはクラニョンが先頭にあり、そのそばにはハデハデしいマントを着たタワケモノの姿があった。

モモたちは、再び白いマントのカノンを先頭にした兵士の列に視線を戻した。
情報では、11時の方向に表れたスローンの群れの方が強大で、キララ王国への接近が早いと予想されていたからだった。
城は盆地のほぼ中心だったから、塔の上からは、城の周辺に展開する兵士たちの様子が良く見える。
二列縦隊で進む兵士たちは、麦畑を通り過ぎると、さっきモモたちが降りてきた草原を登ることになり、その先には雪を頭にいただいた山々が見えている。
「スローンだっ!」
モモたちのそばにいた少年が叫んだ。

第3部−その21−に続く


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