海の母星〜

第3部・シュラバ

ジァン・梅原

−その23−

  その夜、レミ女王は晩餐会にモモたちを招待してくれた。
ようやく撃退したスローンが、再度やって来る恐れはないのか、と言う疑問が出たが、クラニョンの答えは「スローンは夜になると石になってしまう」と、単純明快なものだった。
どうやらスローンは、強い太陽光線が豊かにある時だけ生物になるようだった。

知りたがりやのカノンの調査によると、スローンの基本構成分子は、通常の生物がCHO(炭素、水素、酸素)で出来ているのに、SiO(珪素、酸素)からなっているため、熱エネルギーが乏しい夜間は無生物になるのだろう、とのことだった。
そのため彼らは、通常は空気がほとんどなく、太陽エネルギーを豊富に受けられる高地に生息しているとのことであり、しかも彼らが常食としているベリシウム鉱石は、この惑星マリンの薄い空気層を突き抜けて聳える山脈にあったのだ。
それが、こんな低地にまで現れるようになったのは、惑星マリンの気候に異変が起こったここ数年の現象のようだった。

キララ城の大広間には無数のシャンデリアが輝き、大きな楕円形のテーブルにはあふれるほどの料理が並んでいた。
「ウヒョー、これはすごい」
タワケモノが舌なめずりをした。
「お行儀よくしてね」
シュラバがタワケモノをたしなめた。

テーブルを囲んでレミ女王の左手にモモ、カノン、タワケモノ、シュラバ、ケンハピーと並び、右手にすぐ若い青年、アラ、若い婦人、クラコ、そしてキララ城の高官たちが並んでいた。
「モモさん、キララ王国を守っていただいてありがとうございます。今度の撃退でスローンもしばらくはここに近づかないと思いましてよ」
レミ女王がモモに言った。

「お役にたてて光栄です。でも、私は何もしていませんのよ。ここにいますカノンさん、タワケモノさん、それにケンハピーさんたちが活躍しましてよ」
モモが答えた。
「いえ、私たちはヒメを守るためにいますので、今回に限らずヒメが危うくなればいくらでもいくらでも働くのです」
カノンが静かに答えた。
「これからもモモさんをしっかり守ってあげてくださいね」
レミ女王がカノンたちに軽く会釈した。

「それでは、モモさんたちが無事「聖地ユウ」に着いて、この惑星マリンを救ってくださることを祈念してカンパイをしましょう」
レミ王女の隣にいた若い青年が、ワインを満たした銀のカップを差し上げた。
この若い青年はキララ王国では高い身分にある様だが、どうもこの国では青年の姿をしていても高齢の人々が多いので、外見では判断するのが困難である。

「カンパーイ」「カンパーイ」‥‥
みんな一斉に杯を差し上げた。
「申し遅れましたが、私はキララ王国の長老、フルハウスと申します。このたびは大変なお働き、深く感謝いたします」
皆がワインを飲み干した後、カンパイの音頭をとった若い青年が挨拶した。

第3部−その24−に続く

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