海の母星〜

第4部・頭上の影


ジァン・梅原

−その1−

いよいよモモたちの出発の日が来た。
その日はよく晴れ、山の上からは、どこまでも広がる砂漠がゆらゆらとゆれて見える地平線のかなたまで俯瞰された。
ドーケシはロープで身体を縛られ、ひときわ大きな真っ赤な布が張られたハングライダーの支柱に吊るされることになった。
そして、ドーケシのハングライダーは、一番体重が軽いモモが操縦することにした。

「モモさんたちの旅の安全を祈ります」
レミ女王とキララ王国のすべての人々が見送りのため、山の上まで来てくれた。
そして、群集はじゃまにならないように遠巻きでモモたちを見守る。

「それでは、わたしから出ますよっ」
クラニョンが緑色の布が張られたハングライダーをかつぎあげた。
それぞれのハングライダーは、遠くでも識別出来るようにちがった色の布が張られている。
「そーれっ!」
クラニョンは軽やかに草原の斜面を駆け下りた。

一瞬、三角形のグリーンのカイトが斜面の向こうに消えたが、人々がのびをする間もなく上昇気流に乗って浮かび上がった。
「はいりほ〜、クラニョン、はいりほ〜」
どっと人々が歓声を上げて一斉に空中のクラニョンに手を振った。
ハングライダーは人々の上空で旋回しながら次の機の離陸を待っている。

「次はオレの番だ」
タワケモノ公爵がブルーの布が張られたハングライダーをかついでスタート地点に進んだ。
「シュラバ、あまり急に前を上げると失速するからなっ」
スタート地点でタワケモノはシュラバに向かって言った。
「わかってるって」
シュラバが手をひらひら振った。
「おーおー、お熱いこってすな」
そう言いながらケンハピーもタワケモノにひらひらと手を振った。

「じゃなっ」
ブルーのカイトを背にしたタワケモノが走りはじめた。
トレードマークのはではでしい−表にピンクの地に金色の花模様、裏地が真っ赤な−マントもひらひらと後を追った。
「そーれぇーっ」
続いてピンクの布が張ってあるカイトを背負ったシュラバが走り出した。

やがて、先頭をグリーンに、後方左右にブルーとピンクのハングライダーを従えた三角形の編隊が群集の上空を旋回して次の離陸を待った。

「ほえほえ〜、次行くよ〜ん」
モモを背に乗せたドーケシがスタート地点に立った。
モモはドーケシの背中で、みんなの4倍くらいの大きさの真っ赤なカイトの前部を頭上に持ち上げていた。
カイトの支柱はベルトでドーケシの身体にしっかり結び付けられていた。

「ほえほえ〜」
ドーケシが掛け声とともにどたどたと斜面を走り出した。

第3部−その2−に続く

しょーせつのINDEXに続く

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