海の母星〜

第4部・頭上の影


ジァン・梅原

−その3−

先頭のクラニョンはその雲を避けるように右に旋回した。
「ほえほえ〜、モモ、あれは砂あらしだよ〜ん、あれに巻き込まれたらくしゃくしゃになっちゃうよ〜ん」
ドーケシが言った。
モモたちは砂あらしの雲を左手に見ながら先へ進む。

「ほえほえ〜、後ろから何か来るよ〜ん」
ドーケシの首は真後ろを振り返って見ることができる。
「うん?」
モモは目をこらして後ろを振り向いた。
確かに、後ろから無数の黒い点の集合体のような雲が追いかけてくる。

「カノンー」
モモが叫んだ。
モモの左後方にいたカノンがついと前に出て来て、モモにひらひらと手を振った。
モモも手をひらひらさせると後方を指差した。
カノンは後ろを振り替えると無数の黒い点を認め、当惑したように首を振った。
みんなも一斉に振り返った。

先頭のクラニョンが左旋回の合図を出し、みんなはモモを中心とした編隊体系をキープしたまま左回りに一回旋回した。
無数の黒い点はみるみる近づいて来た。
それは白い鳥の群だった。

群はモモたちに追いつくと編隊に平行して飛びはじめた。
その鳥たちは白い大きな翼を優雅に動かしながら滑空していたが、良く見るとルイルイと同じように翼の先に手のひらがついていた。

突然群から三羽の小さい鳥が出てきて、モモのカイトにとまった。
カイトは鳥の重みでぐらりと傾き、高度を下げた。
「えっ、なになに‥‥」
モモはあわててカイトを操作して姿勢を保とうとした。
「だめよ、だめよ、あんたたち‥‥、それは勇者モモさまのカイトよ」
ルイルイがバタバタ飛び回ってギャアギャア騒いだ。
「ユウシャさまってなんだ」
カイトにとまった鳥たちがしゃべった。
どうもルイルイの仲間らしい。

その間もモモのカイトはどんどん高度を下げる。
ケンハピーがすばやくカイトの操縦ロープを口にくわえ、背中から弓矢を取り出し、鳥をねらった。

その時、群からついと離れてきた大きな白い鳥が、モモのカイトにとまった鳥たちを大きな翼でばさっとひとなでした。
カイトにとまった鳥たちははねとばされ、そのままかなり下まで落ちて、あわてて羽ばたきして群に戻っていった。

第4部−その4−に続く

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