SFフアンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

−その1−

地の果てまで続くと思われる砂の海だった。
その砂漠を、白いローブをまとい、少し赤みがかった長い髪の少女を背中に乗せて、緑色のぼてぼてした動物が歩いていた。
その動物の頭に、テラ (地球) にいるという鳩によく似た空色の鳥がバタバタと飛んできて、ちょこんととまった。
「わたし、それ、見た、じゃない。言った、じゃないよ」
明るい空色の鳥は目をくるくるさせ、両手を広げて肩をすくめた。

その鳥も、テラ (地球) の常識から行くと、まるっきり変な鳥だった。
両方の羽根の先に手のひらがあって、しゃべるたびにボキャブラリーが不足する分を、両手(両翼?)を派手に使ったアクションで補っていた。

「ルイルイ、 『見たじゃない』 は 『見ていない』、 『言ったじゃない』 は 『言っていない』 だよ、動詞の過去形に 『じゃない』 をつけても正しい否定形にならないわ」
歩き続けるぼてぼてした緑色の動物にまたがった少女が言った。
赤みがかった長い髪を風になびかせている少女は、ざっくりした白いローブの様なものをまとっていたが、肩から上に柄が飛び出るような長大な剣を背中にしょっていたし、風にあおられたローブの下から、白い簡易鎧が時々見え隠れしていた。

「ホエホエ〜、モモ、ルイルイにいくら言ってもだめだよ。ルイルイ、典型的なトリアタマなんだから・・・・・、聞いても直ぐに忘れるね」
モモと呼ばれた少女が乗っている6本足の動物が言った。

この動物も、テラのジョーシキからずいぶん離れた、変な動物だった。
全体が緑色の毛に覆われたぼってり太った身体に、テラの馬より長くて、後ろを向くことが出来る首と、オレンジ色のフサフサした長い毛が下がった尻尾を真後ろにピンと伸ばしていた。

「ドーケシ、そんなことを言うもんじゃないよ」
モモはドーケシをたしなめた。
「ホエホエ〜、わかったよ〜ん」
そう答えたドーケシと呼ばれた緑色の動物は、急に前方をキッと見据えて立ち止まった。

「モモ、キケン、キケン!」
ルイルルイがバタバタと羽ばたいて上空に舞い上がった。
「砂の中、何かいる!。わたし、呼んだじゃないよっ」
上空で円を描きながらルイルイが叫んだ。

前方の砂がモッコリと持ち上がった。
巨大な物体が流れ落ちる砂を分けて、ぬっと鎌首を持ち上げた。
褐色のトゲトゲのウロコに覆われた菱形の顔面に、2っの真っ赤な目が光る。
真横に裂けた口がくわっと開き、鋭い牙の行列の奥から、ちろちろと枝別れした赤い長い舌が躍り出る。

以下、第2部−その2 −に続く


しょーせつの INDEX に戻る

TOPに戻る