SFファンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

−その4−

「町だって」
モモとドーケシは地平線の彼方をじっと見つめた。
そう言われると東の地平線の空がなんだかボーっと明るく見えた。
「ホエホエー、それはきっとアヤの町だよ」
ドーケシが振り向いていった。
ドーケシの首は、テラ(地球)にいたと言われる馬と違って、真後ろを見ることができる。

「そうだよ、ぴかぴか光っているよ」
ルイルイが降りてきてドーケシの頭にとまった。
「ホエホエー、重たいよ」
ドーケシは頭を振ったが、ルイルイは羽根を広げてバランスをとり、ドーケシの頭からはなれなかった。
「ルイルイおどき、ドーケシがいやがっているじゃない」
モモがたしなめた。
ルイルイは再度飛び上って明るくなっている地平線に向かった。

「そうねえ、この地図だと、もうそろそろアヤの町に着いてもいいころね」
モモは甲冑の胸ポケットから、ボロボロになった羊皮紙の地図を取り出した。

砂漠は、昔の海岸線になっていた渚の連なりの前で終わっていた。
アヤの町は、その先のチャンチャンツリー(チャンチャンの木)の林に囲まれていた。
そのため、町は夜になるとぼんやりとした光に包まれているのだ。
というのも、町を取り囲むチャンチャンツリーに鈴なりになっている小さな鐘形をした木の実が、空気の動きや音などに敏感に反応して、チャンチャン鳴りながらピカピカ光るからだった。

町に行くには、この林の中をうねりながら登っている道を進まなければならない。
モモたちが、アヤの町に通じるこの道を通って林の中に入ると、彼等を震源地とした光と音の波が、林の中を波紋の様に広がっていった。

「あまり、静か、じゃないね」
ルイルイが降りてきて、ドーケシの背中にとまった。
実際、チャンチャンツリーはモモたちに反応してオレンジ色にピカピカ光り、無数の鐘たちがそれぞれの音色で鳴り、ざわめきの様に周りに広がって行く・・・・・。
小さな鐘は、甲高い音で、大きな鐘は低い音を出していた。
ただ、どういった加減か、鐘の大小による音程差が3度に常にキープされていたので、全体の音色は雑音と言うよりは和音として響いていた。

しばらく歩いていくと、かすかに笛の音が聞こえてきた。
笛の音はチャンチャンツリーの無数の鐘の音をお供にして、高く、低く、微妙なハーモニーをかもしだしていた。

以下第2部−その5− に続く


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