SFファンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

-その6-

町の入り口のゲートを通ると正面が広場になっており、中央に沢山の彫刻に囲まれ、豊富に水を吹き出している大きな噴水があった。
中央の彫刻はギリシャ風の優雅なものだったが、それにまじって「野良犬アヤ」や「クロコネコ」「野良猫貴流美威」「ナイトメア」「キューピィー」「シャア皇帝」など、どこかの美術館の中庭にあったような像もあった。
アヤの町は、その広場を中心にして左手に教会、町役場、ホテルなどの大きな建物が立ち並び、その右手には商店街や一般の住宅など続く、典型的な交易の町だった。
先頭を歩くカノンは、こんな小さな町には、似つかわしくないような壮麗な建物のホテルに向かった。
「ホエホエ〜、ボクはこのあたりにいるからね」
ドーケシから降りたモモは、カノンにしたがってホテルに入った。

入ったところはあかあかと巨大なシャンデリアが輝いている広いホールになっていて、いろんな国々の衣装を着けた人々で賑わっていた。
「いらっしゃい、お待ち申し上げていました」
右手にあるインフォメーションフロントから、タキシードに身を包んだ男が走り出てきた。
「さあ、こちらでございます」
男はていねいにモモに挨拶をすると先頭にたって歩きだした。
「じゃ、いずれまた」
カノンはそう言うとホールに残った。

長い廊下を歩いてモモが通されたのは、湖に面した壮大な作りの離れ家だった。
ホテルの後ろには満々と水をたたえたかなり大きな湖があった。
元海底だった砂漠を通ってきたモモにとって、なぜここにこんな大きな湖があるのか不思議だった。 湖の対岸に瀟洒な館が見えた。

「こんなところに湖が・・・」
モモはふと、つぶやいた。
「星恋湖 (ほしこいみずうみ) と呼ばれています」
いつのまにか入り口に2人の女の子が立っていた。

「向こう岸の館は 『黄昏館 (たそがれやかた) 』 と呼ばれ、つい最近まで世界中の詩人たちが集まって賑わっていましたが、今は閉館されて誰もいないようです・・・・。と言うのも、館の主の フユウ 様が、突然旅に出てしまわれたそうです」
もう一人の女の子が答えた。

「あなたがたは・・・」
モモがたずねた。
「私たちは、ここでモモ様につかえるように、シャア様のご命令で派遣されました 『シュラバ』 と 『アイス』 です。 なんでもおおせつけくださいませ。今晩は町で歓迎会をされるとのことですので、先ずシャワーをおつかいくださいませ」
二人の侍女が自己紹介をした。
「そう、わかったわ、よろしくね。 ところでカノンと言う青年将校もシャアの命でここにきたの」
「はい、皇帝直属の親衛隊のナイトです。 年はお若いですけれど、闘うことに関しては天才と言われているお方です」


以下第2部− その7 −に続く



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