SFファンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

−その7−

「モモさま、今宵はプリンセスの歓迎舞踏会が町長主催で行われます。モモさまは主賓ですから、これをお召しになって下さい」
モモがシャワールームから出てくると、侍女のシュラバがフリルが沢山ついた純白のドレスを持って立っていた。
その横でアイスが鳥かごのようなペチコートをささげ持っていた。

「ええーっ、そんなもの、着るの?」
モモは渋い顔をした。
いつもラフな服装で過ごしていたモモにとって、女性のやさしさ、美しさ、可愛らしさなどを基調としたようなこんなドレスは、最も苦手なものゝ一つだった。

「ええ、そうですよ。今夜は沢山の著名な人々がお見えになります。モモさまは主賓ですし、シャア帝国の第三皇女として恥ずかしくない格好をなさらなくてはなりません。そうでないと、私たちがシャア皇帝のお叱りを受けてしまいます」

モモはシュラバとアイスにしぶしぶドレスの着付けをしてもらう。
「ヴッ、ぐ、ぐるじいっ、そんなに締め付けないでっ」
「いーえ、これが皇女としてふさわしい着付けでございますよ」

二人の侍女は慣れた手つきで、モモにコルセットを着け、ペチコートを着け、その鳥かごの上ににふうわりと純白の、王家の紋章を優雅にアレンジしたレースのドレスを広げた・・・いわゆるブリンセスにふさわしい姿にモモを仕立てた。

最後に、モモはシャア皇帝の皇女をあらわす冠を頭に乗せなくてはならなかった。
それは髪にしっかりと止められ、簡単には頭から落ちないようになっていたが、冠には無数の宝石がちりばめられいたので結構重かった。

「なにー、これ、顔がこわばってしまうよ」
「ええ、決して下をお向きにならないで下さい。いつも真っ直ぐを前をお向きになっておられるように。そうでないと冠が傾いて、お髪がひっぱられて、多少痛いかと存じます」

かなりしゃっちょこばった感じになったモモは、案内されて厚い緞帳(どんちょう)の前に立たされた。
ほどなくファンファーレが高らかに鳴った。
「モモ王女様のお出ましです」
呼び声とともに目の前の緞帳がゆっくりと左右に開く。

モモはホールの一段と高いところに立っていた。
足もとから伸びた赤い絨毯 (じゅうたん) が、傾斜がゆるやかで幅が広い階段を 5、6段ほど下りて、ホールの中央まで続いていた。
絨毯に沿って中央を開けた両サイドには、着飾った人々が大勢モモを見上げ、拍手をしていた。

しばらくして拍手が止み、一瞬、シーンとなった。
『えーっと、何か気のきいたことを言わないといけないんだ』
モモはあせった。


以下第2部− その8 −に続く



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