SFファンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

−その9−

出席者の紹介はまだまだ続く。
『ウテナ共和国、元・革命評議会議長、きらら探索隊長、タワケモノ公爵殿』
華やかな狩りの衣装の男性が進み出て、左手を胸の上におき、おおげさに右手で羽飾りがついた派手な帽子を脱いで前に差し出し、あいさつをした。

「お目にかかれて光栄です。私は世界中をめぐって 『きらら』 をさがしています。 でも最近 『きらら』 は永遠の理想像で、現実には存在しないのではないか、との疑いに悩まされるようになりました」
タワケモノ公爵は苦渋に満ちた顔で言った。
「あなたの理想がかなえられることを、心から希望します」
モモはすこし気の毒そうに答えた。

『アヤ町美術館々長、記号絵画協会長、ポアロ公爵殿』
真紅のベレー帽を被り、真紅のガウンを羽織った青年が、これまた真紅のパーティードレスに身をつつんでいる婦人を連れて前に進み出た。
「はじめまして、私はプリンセスモモの美しさを記号絵として後世に残そうと考え、その方法について研究しています」
「ありがとう、あなたの芸術が永遠に高く評価されることを希望しています」
モモはうれしそうに答えた。

『カーネルサンダース王国、吟遊詩人、しんかいぎょ男爵殿』
紫色のマントをまとった、豊かな風格の大男で、長い銀髪の若者が出てきた。
大きいマントの下は、全て黒い革製品で身をかためていた。
この青年は、詩人と言うよりは戦士と呼ぶ方がふさわしい体格だった。
「私は、本来は戦士なのですが、言葉が生み出す魅力にとりつかれてしまいました。言葉を全て表音文字だけであらわすと、意志を伝えるスピードと情報量は落ちるのですが、それを超えるなにかが伝わることを発見しました」
「あなたの発見は、みんなの幸せにつながるものと信じています」
モモが答えた。

『マリン科学研究所長、勝手に拝借解釈主催のジアン男爵殿』
グリーンのベレー帽を被り、ギルウェルスカーフを首に巻き、ポーイスカウトの制服姿の青年が、うすい黄色を基調としたパーティードレスを着た夫人を伴って前に進んだ。
「無事に聖地『ユウ』に着いて、この惑星マリンを救われることを期待しています」
「一生懸命努力します」
モモはニッコリ笑って答えた。実はこのジァンも昔から知っている友人だった。

出席者の紹介はえんえんと続き、全員がモモにあいさつをし、モモはていねいにあいさつを返した。
やがてやっと紹介か終わり、円舞曲が演奏され、優雅なダンスが始まった。
「やれやれ・・・、やっとおわったわ」
モモがホッとした時、将校の礼装姿のカノンがモモに近づき、静かに言った。
「プリンセスの衣装、なかなかお似合いですね・・・・。旅をしている姿も魅力的ですが、今の方がずっと素敵ですね」
「えっ、なになに・・・」
「これからの旅、しゃあ皇帝陛下の命で、ずっとお供することになりましたのでよろしく」

それだけ言うとカノンはモモの返事を待たず、さっさとホールの入り口に戻っていった」

以下第2部− その10 −に続く



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