SFファンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

−その10−

モモたちの旅はまだまだ続く。
アヤの町を後にしたモモたちは、4人と2匹になっていた。
当初のモモ、ドーケシ、ルイルイに、カノン、タワケモノ、シュラバが加わっていた。
特にシュラバは、シャア皇帝の命でアヤの町に来た侍女だったが、出発の日に男装であらわれ、同行を願い出た。聞けばアヤの町に行くことも、彼女がシャアに願い出たとのことだった。
『女性はちょっと・・・』と、渋い顔をしたカノンがシュラバと立ち会い、相当な使い手であることが判明したので許可されたのだ。
タワケモノ公爵は、聖地 『ユウ』 に 『きらら』 があるのではないか、と言うことで同行を願い出た。

アヤの町を出ると、上り坂のサバンナ地帯がいつまでも続き、やがて背後の町と星恋湖がはるか下の方に小さく見える様になったころ、モモたちの行く手には険しい山脈が立ちふさがっていた。
この惑星マリンの大気層はもともと薄く、山脈の高い部分にはほとんど空気がないため、モモたちは山の切れ目を探してその底を歩いて越えなければならなかった。

「モモ、この先ガンツリー(鉄砲の木)の林、危険」
ルイルイが空中偵察から戻ってきて言った。
「えっ、ガンツリーとか・・・・」
モモの質問にタワケモノが答える。
「ガンツリーが自生しているところは岩だらけの土地なんです。したがってガンツリーは、種子を地面に埋めるため、すごい圧力で岩に種子を打ち込んでいるのですよ」

林は目の届く限り前方に細長く横たわっていて、道はそこに向っていた。
どうやらこの林を横切らなければならないようだった。
林に近づくにしたがって激しい発射音が聞こえてきた。
『ドォォーン、バシューン、ドスーン・・・・・』
ヒュッと流れ弾(種子)が飛んできてドーケシに当たった。
『バシッ!』
「ホェホェ〜、痛いよ〜ん」
しかし、林からかなり遠いので当たってもまだたいした威力はないようだった。
「どうしますか」
シュラバが落ちた木の実を拾い上げて言った。

「帝国図書館で読んだことがありますが、ガンツリーが種子を発射するのは昼間だけだそうだから、ここで夜が来るのを待ったらいいと思いますね」
カノンが提案した。
「しかし、山の近くでは夕暮れになるとキラータンポポが飛んできて危険ですよ」
タワケモノ公爵が言った。
キラータンポポと言うのは、種子がテラ(地球)にあるタンポポによく似ていて、風に乗ってふわふわと空中を浮遊するからで、これも伝説の人「トシオ」によって命名されたと言われている。
と言うのも、トシオ以外は誰も本物のタンポポを見たことがないのだ。
ただし、テラ(地球)のタンポポと違って、その本体は小さな潅木で、もともと岩山の斜面によく群生している植物だった。

この潅木の種子は、赤い綿の様な羽根の下に種子をぶら下げていると言う、姿は一見可愛らしい外見だが、実際は危険きわまりないものだった。
と言うのもこの種子は発芽するためには、動物に寄生しなければならないのだ。

ふわふわと風に乗って飛んできた種子は、いったん動物の身体に着陸すると素早く白い細い根を出してその身体に自生してしまう。
そして、一度とりつかれた動物はキラータンポポを身体で養うことになり、最後にはタンポポに栄養分を吸い取られて死ぬことになる。
寄生した宿主が死ぬとタンポポは地面に根をおろし、さらに分解した動物性タンパク質を栄養にして育つのだった。


以下 第2部−その11 −につづく



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