SFファンタジー 海の母星〜 −第2部 モモ− ジァン・梅原 −その13− このネコもまた変わっていた。 三角の耳をピンと立て、尻尾を動かしてルイルイを見上げる敏捷そうな姿は、どう見てもテラ(地球)のネコそっくりだったが、何と前足(手?)を上げて横に振って指を鳴らし、くやしそうに言った。 「惜しいっ!、ムシドラがよけいなことを言わなければつかまえられたのにな」 「キルミー、だめでしょ。お客様には親切にしなければ・・・」 ムシドラと呼ばれた女主人が言った。 「にゃ〜い」 キルミーと呼ばれたネコそっくりさんが、そっぽを向いて答えた。 「いらっしゃい。喫茶シャッフルにようこそ」 ムシドラがカウンターの前に座ったモモたちに言った。 「ここ、喫茶店なの、宿屋じゃないの」 モモが聞いた。 というのは、入り口の扉のプレートには、Rose Inn(宿屋) と書いてあったからだ。 「そうねぇ、前は Inn だったけど、皆さん、昼間来て、夜出かけて行くでしょ。泊まる人なんていないから、今は喫茶店」 ムシドラが笑いながら言った。 「さて、ここは多くの旅人がひとときの安らぎを求めて来る、ムシドラの喫茶店シャッフルです。マリンはまだまだ危険がいっぱいなので、知らない土地に出かける旅人は、それこそ命がけなんですね。さて、皆さん、何になさいますか?」 ムシドラが改まった口調でいった。 「そうねえ、私はダージリンティーをいただくわ」と、モモ。 「私にはブラックコーヒーがふさわしい」と、カノン。 「ウィンナーコーヒーを下さいな」と、シュラバ。 「バーボン、あるかなっ」タワケモノ公爵が言った。 「ありますよ。でも、危険な深夜の山道を行くのにアルコールが入って大丈夫かしら。ガンツリーの森には、犠牲になった旅人に幻覚を見せ、その生命エネルギーを食べて生きているイルージョンがいましてよ。」 ムシドラが言った。 「そぉかぁ〜。よし、やめた!。じゃブラックだ」 タワケモノ公爵はちょっと考えてから言った。 「意外とスナオですね」 カノンがからかった。 「足でまといになるとまずいからな。しかし、残念だな。バーボン、ボトル持っていけないかな」 タワケモノ公爵は惜しそうに言った。 「いいですよ。ええと、あまり大きいのじゃ荷物になるしー、じゃ、これ持ってらっしゃいな」 ムシドラはカラフルな棚から小型のウィスキーボトルを取り出し、カウンターの上に置いた。 「ありがてぇっ、サンキュー」 タワケモノ公爵は目を輝かせて、大事そうにボトルを腰の革袋に入れた。 飲み物が出てくる間、室内には静かなメロディーが流れている・・・・・。 ・・・・・バッヘルベルの『カノン』だ・・・・・。 テラの大昔、偉大な音楽家がいたとのことだが、その音楽家・・・・バッヘルベルが作曲した『カノン』だ・・・・、モモはシャア皇帝の城を思い出していた。 この曲は、しゃあ皇帝のお気に入りで、モモは小さい時からこの『カノン』を聞いて育ったので、とてもなつかしく感じた。 『ムシドラさんは、昔シャア帝国に行ったことがあるのかしら』モモはフト思った。 (作者注:現在バックで流れているMIDIが『バッヘルベルのカノン』です。ひまわりさんのHPからいただきました。) 第2部−その14− に続く しょーせつのINDEXにもどる TOPにもどる
−その13−
このネコもまた変わっていた。 三角の耳をピンと立て、尻尾を動かしてルイルイを見上げる敏捷そうな姿は、どう見てもテラ(地球)のネコそっくりだったが、何と前足(手?)を上げて横に振って指を鳴らし、くやしそうに言った。 「惜しいっ!、ムシドラがよけいなことを言わなければつかまえられたのにな」 「キルミー、だめでしょ。お客様には親切にしなければ・・・」 ムシドラと呼ばれた女主人が言った。 「にゃ〜い」 キルミーと呼ばれたネコそっくりさんが、そっぽを向いて答えた。
「いらっしゃい。喫茶シャッフルにようこそ」 ムシドラがカウンターの前に座ったモモたちに言った。 「ここ、喫茶店なの、宿屋じゃないの」 モモが聞いた。 というのは、入り口の扉のプレートには、Rose Inn(宿屋) と書いてあったからだ。 「そうねぇ、前は Inn だったけど、皆さん、昼間来て、夜出かけて行くでしょ。泊まる人なんていないから、今は喫茶店」 ムシドラが笑いながら言った。
「さて、ここは多くの旅人がひとときの安らぎを求めて来る、ムシドラの喫茶店シャッフルです。マリンはまだまだ危険がいっぱいなので、知らない土地に出かける旅人は、それこそ命がけなんですね。さて、皆さん、何になさいますか?」 ムシドラが改まった口調でいった。 「そうねえ、私はダージリンティーをいただくわ」と、モモ。 「私にはブラックコーヒーがふさわしい」と、カノン。 「ウィンナーコーヒーを下さいな」と、シュラバ。 「バーボン、あるかなっ」タワケモノ公爵が言った。 「ありますよ。でも、危険な深夜の山道を行くのにアルコールが入って大丈夫かしら。ガンツリーの森には、犠牲になった旅人に幻覚を見せ、その生命エネルギーを食べて生きているイルージョンがいましてよ。」 ムシドラが言った。 「そぉかぁ〜。よし、やめた!。じゃブラックだ」 タワケモノ公爵はちょっと考えてから言った。 「意外とスナオですね」 カノンがからかった。 「足でまといになるとまずいからな。しかし、残念だな。バーボン、ボトル持っていけないかな」 タワケモノ公爵は惜しそうに言った。 「いいですよ。ええと、あまり大きいのじゃ荷物になるしー、じゃ、これ持ってらっしゃいな」 ムシドラはカラフルな棚から小型のウィスキーボトルを取り出し、カウンターの上に置いた。 「ありがてぇっ、サンキュー」 タワケモノ公爵は目を輝かせて、大事そうにボトルを腰の革袋に入れた。 飲み物が出てくる間、室内には静かなメロディーが流れている・・・・・。 ・・・・・バッヘルベルの『カノン』だ・・・・・。 テラの大昔、偉大な音楽家がいたとのことだが、その音楽家・・・・バッヘルベルが作曲した『カノン』だ・・・・、モモはシャア皇帝の城を思い出していた。 この曲は、しゃあ皇帝のお気に入りで、モモは小さい時からこの『カノン』を聞いて育ったので、とてもなつかしく感じた。 『ムシドラさんは、昔シャア帝国に行ったことがあるのかしら』モモはフト思った。
(作者注:現在バックで流れているMIDIが『バッヘルベルのカノン』です。ひまわりさんのHPからいただきました。)
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