SFファンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

−その14−

室内にはバッヘルベルの『カノン』が流れている・・・。
「ここは本当にアットホームところですね。外はキラータンポポが降っているのに・・・・。ムシドラさん、素敵な場所を提供いただいて本当にありがとう」
モモがダージリンのティーカップを両手ではさみ、温かさを確かめるようにしながら言った。
「いーえ、そう言っていただけるだけで、私はとてもうれしいのですよ」
ムシドラが答えた。

「ところで、わたしたちはこれからあの山脈を越えて行こうと思います。あの山脈とその向こうについて、何かわかっていることがありましたら教えて下さい」
モモがたずねた。
「これから先はとても危険なので誰も行きませんし、山の向こうから来る人もいませんのよ。どうしてそんな危険なところに皆さん、行こうとなさるのですか」
ムシドラの質問に、皆いっせいにモモに注目した。

「私は聖地『ユウ』に行かなくてはならないのです。『ユウ』に行けばこの死にかけている惑星マリンを救うことが出来る何かがあるのではないか、と思っています」
モモが話しはじめた。

「あら、あなたがそうなの。遠いシャア帝国にこの世界を救う勇者が生れ、旅に出たと言う、うわさは聞いたことがあったけど・・・・・。でも、かわいい勇者さんね」
ムシドラが関心したようにモモを見た。
「でも、モモは強いのよ。少なくともアヤの町までは、ルイルイとドーケシだけしかいなかったのよ」
シュラバが言った。

「最初はシャア皇帝の依頼で『この死にかけている惑星マリンを救う』ということで旅にでました」
モモが静かに話を続ける。
「そして、旅を続けて行くうちに、いろんなことを学びました・・・・。この惑星マリンには沢山の人々が生活しているのですね。そして、沢山の生物たちもまた、みんないっしょうけんめい、生きているんですね。でも・・・・このままでは、この惑星と一緒にみんな死んでしまうのよ。何とかしなければ・・・・。私は今や使命感でいっぱいなんです」
みんなシーンとしてモモの声に聞き入っていた。

「この惑星マリンは遥か昔、伝説の人『トシオ』によって作られたと言います。私はその血をひいて生れたため、今度はこの惑星を救うのが役目だと人々に期待されているのです。私が聖地『ユウ』について何かしてくれるのではないかと期待しているのです。ですから、どんな危険が待ち構えていても、私は行かなくてはならないのです・・・・。この惑星マリンが死んでしまう前に・・・」
最後のモモの声は、こんな可愛らしい少女のどこにそんな勇気があるのか、と思われるほど、固い決意と力強さがこもっていた。

「モモさん、そんなに気負いこんじゃだめよ。まだまだ旅は長いんだから・・・」
母親が子供をさとすように、ムシドラが落ち着いた声で言った。

(バックに流れているMIDIが「バッヘルベルの『カノン』です。ひまわりさんのホームページからいただきました。)

その−15− に続く


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