SFファンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

−その20−

「うわぁおっ!」
その女性は声にならない悲鳴を上げ、オレンジ色の光を撒き散らして空中に飛び散った。
「おぉっ!」
前にいたタワケモノとシュラバが後ろに飛びのいた。
光の中から毛むくじゃらな長い脚を持つ、巨大な蜘蛛があらわれた。
二つの、ピカピカと真っ赤に光る目がモモを睨み付けた。

「うわ〜っ、これはなんだっ」
飛び下がった二人は剣を抜き放って身構えた。
「シューッ、シューッ」
蜘蛛は白いねばねばした糸を二人に吐きかけると、先が鋭い爪になった巨大な脚を持ち上げ、いきなり振り下ろしてきた。
二人は素早く飛び退き、どすっと空をきって地上に突き刺さった脚に切りかかった。
「カーンッ!!、カーンッ!!」
二つの剣は弾きかえされた。
「うわっ、こいつは鉄のようにかたいぞっ」

「シュッ!シュッ」
モモのそばにいたケンハピーが立て続けに弓で矢を射る。
さすがに狙いは正確で、矢は蜘蛛の頭部に吸い込まれた。
「カーンッ!!、カーンッ!!」
矢が弾きかえされた。
「ドーケシっ!どうしたっ!」
モモの声がひびく。
「ホェホェ〜っ、変身できないよぉーっ」
ドーケシが悲鳴をあげる。

ドーケシの特長は、戦闘時に燃えるような金色の引き締まった体格に変身することだったが、そこには必死の顔つきをした緑色のぼてぼての身体をした動物がいるだけだった。
「えいっ!」
ドーケシから飛び降りたモモが長剣を両手に掲げ、二人の間に走り込むと巨大な蜘蛛の脚に切りつけた。

一瞬、剣から稲妻が走り、蜘蛛全体が青白い光に包まれた。
「ガァァァ〜ンっ!」
長剣は打ち込んだ力と同じ勢いではねかえされ、モモははずみで長剣と一緒に1メートルほど後ろにはねとばされた。
慌てて走り寄ったカノンがモモを助け起こした。

電流に包まれた瞬間、蜘蛛はたじろいたようだったが、直ぐに体制を建て直して攻撃してきた。
「まずいっ!、こいつはガンツリーの森に住んでいるから甲羅が装甲板になっているんだっ」
剣を構えてじりじりと下がりながらタワケモノが言った。

「ケンハピーっ!あいつの目を射てっ」
カノンが叫ぶ。
「ラジャーっ」
「シュッ!シュッ!」
ケンハピーの矢がピカピカ光る蜘蛛の目に吸い込まれた。

第2部−その21 −に続く


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