SFファンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

−その21−

ケンハピーの矢が、ピカピカ光る蜘蛛の目に吸い込まれた。
「ピシッ、カーンッ!」
「ゴオオオォーッ!」
蜘蛛は一瞬その動きを止め、前足二本でその頭をなでた。
ピカピカと光る真っ赤な目は、一つになっていた。
「シュッ!」
再びケンハピーの矢が走る。
「グゴゴォーッ!」
蜘蛛は前足二本を振り上げ、モモたちに突進してきた。
しかし、光る目はもうなかった。

素早く避けたモモたちの横を走り抜けた蜘蛛は、激しくガンツリーの大木に衝突し、その大木を根元から折り倒した。
突然、蜘蛛が爆発して激しい炎が巻き上がり、瞬間的に炎は広がってモモたちを包んだ。
「うわっ、あちちちっ」
タワケモノが悲鳴をあげた。
「うろたえるなっ!これは蜘蛛が作ったイリュージョン(幻覚)だっ」
カノンの凛とした声が響く。
「本当だ、全然あつくないわっ」
全身炎に包まれたシュラバが言った。

炎の中から、両足を振り上げた巨大な蜘蛛がぬっと表れ、タワケモノに襲いかかった。
「カーンッ!」
タワケモノが剣で蜘蛛の脚を払った。
「音を立てるなっ。全員道なりに走って待避っ」
横っ飛びにとんで道端に出たカノンが大声で指示した。
蜘蛛はカノンの声の方向に突進した。
カノンは素早く避けると、モモに駆け寄り、モモをドーケシの背に押し上げた。
「にげろっ」
みんなはドーケシに乗ったモモを取り囲む様にして走り出した。
蜘蛛はみんなの足音めがけて突進してきた。
しかし、また道を外れてドォーンとガンツリーの木に衝突した。

全員が走って、走って、へとへとになった頃、森の出口が見えてきた。
いつのまにか炎もなくなり、道はもとの暗い森の中にあった。
「ああ、おどろいた。みんな無事か」
先頭を行くタワケモノ公爵が立ち止まって言った。

「カノン、どうして目が蜘蛛の急所だと判ったの」
モモが聞いた。
「なに・・・・、あの蜘蛛はガンツリーが打ち出す弾の中に棲んでいますね。だから全身が装甲板で覆われていました。でも目はピカピカと瞬いていましたね。と言うことは、やつは目まで装甲板で覆うことが出来ないので、厚いシャッターの様なマブタを常に開け閉めして見ているのではなかろうか・・・・と思ったのです。それに、我が方にはそのシャッターが開く瞬間を狙える弓の名手がいましたからねぇ」
「そう、ケンハピーさん、ありがとう」
モモは、ドーケシの横を歩くケンハピーに言った。

「ヒメのお役に立てて光栄です」
ケンハピーは、ドーケシに乗ったモモを上気した顔で見上げて言った。
「ヒメ・・・・、ちょっと、ヒメと言うのは私のこと?」
モモが聞いた。

第2部−その22− に続く


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