SFファンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

−その22−

「ヒメ・・・・、ちょっと、ヒメって私のこと」
モモが聞いた。
「そうです。プリンセスモモ様」
ケンハピーはまぶしそうにモモを見上げた。その目には好意以上のものがこもっていた。
なぜなら、ケンハピーは蜘蛛との闘いの時、モモがドーケシを飛び降り、長剣で蜘蛛に切りかかった時から、モモを尊敬のまなざしで見る様になっていたのだった。

「ヒメ‥‥‥、でも、ちょっとこれ、バカにしてない?」
モモが言った。
「いいえ、ヒメはシャア皇帝の第三皇女ですから当然ですよ」
カノンがケンハピーに替わって言った。
「いやだな。モモと言ってくれない」
モモがみんなをみまわした。

「だめです。もし名前を呼ばなくてはならないと、プリンセスモモ様、とか、モモ王女様、とかになって、よそよそしくなりますよ。それに第一危急の場合は、モモ王女様、なんて言っているひまはありません」
「男の場合『トノ』と言いますが、モモ王女様は『ヒメ』と呼ばれるべきですね」
カノンがきっぱり言った。

モモンガの樹に住むmomoはまもなくmamaになる(チョーローカルネタ^▽^;)のだが、ここのモモは『ヒメ』になった。

「ドォーン!」
不意に大きな音がして、シュラバの足元にパッと砂ほこりがたった。
「いけないっ!、夜明けだっ」
森はしらじらと明るくなり、それとともにガンツリーが活動を開始した様だった。
「にげろっ!」
またもやモモたちの集団は森の出口をめざして走りだした。

森を抜けるとまた草原になっていたが、その向こうには山脈の岩壁が立ちふさがっていた。
道はその岩壁にぶつかると、しばらく岩壁に沿って登りながら続いていた。そしてその岩壁が大きく裂けて谷間が山脈の奥深くのびている所にやってくると、道は方向を変えて川に沿って急な登り坂で谷の奥深く続いていた。

「ヒメ、このあたりで朝食にしましょう。これから先は谷間に沿った険しい小道になっているようですから」
カノンが提案した。
そこは見晴らしの良い小高い丘の頂上になっていて‥‥‥、もっとも片方は岩盤だったので遠景は今までモモたちが歩いてきた方向だけだったが、かなり広い範囲が草原になっていて、草の間から巨大な岩石が数多く頭を出していた。
そして、今日も暑くなるぞ、と言う顔をした朝日がそれらの岩々を赤々と照らし、美しい光のハーモニーを演じ始めていた。

たき火がたかれ、コーヒーを沸かし、皆シャッフルでもらった弁当をひろげた。
ちょっとしたピクニック気分になっていた。

第2部−その23− に続く


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