SFファンタジー


海の母星〜

−第2部 モモ−

ジァン・梅原

−その23−

「夜通しあるいたから腹がへったぞ〜」
タワケモノ公爵が小さな岩の上に腰をおろすと、ザックの中からムシドラにもらったバーボンの小ビンを取り出した。

「ドーケシ、さっきはどうしたの。かげんでも悪いの?」
モモが心配そうにドーケシに聞いた。
「ホエホエ〜、何だかわからないけど変身できなかったよぉ〜」
ドーケシが情けなさそうに言った。
「変身する、じゃないドーケシ、闘いの時、役に立つ、じゃないね」
ルイルイがドーケシの頭からバサバサと羽ばたいて背中に飛び移った。

「ルイルイ、そんなことを言うもんじゃないよ。調べておやり」
モモがたしなめた。
「はぁ〜い」
ルイルイはドーケシの緑の毛をかきわけながらドーケシの身体を調べ始めた。

「ああああ〜っ!タンポポっ!」
突然ルイルイが叫んだ。
「ええっ、何だってっ」
皆が一斉に立ち上り、ドーケシの周りに集まった。
ルイルイがかきわけた、お尻に近い背中の緑の毛の間から、キラータンポポの芽が見えた。
「ホエホエ〜、タンポポの根が入っていたのか〜」
ドーケシが悲痛な声をあげた。
シャッフルでケンハピーと一緒に入ってきた種子が付着して、誰も気が付かなかったのだ。

「えいっ、このやろーっ!」
タワケモノ公爵がタンポポの芽をつかんで引っ張った。
「ホエホエ〜、痛いよう」
ドーケシが悲鳴をあげた。
「およしなさい、タワケモノ公爵。キラータンポポの繊維は、剣でも切れないほど強靭な高分子で出来ていることぐらい、ご存知でしょう」
カノンが言った。

「どーしましょう。シャッフルまで引き返した方がいいと思いますが・・・」
シュラバが痛々しそうにドーケシを見て、モモに言った。
「ホエホエ〜、もう引き返しても間に合わないよ〜。キラータンポポは発芽してしまったら、溶解液でも身体に入った根はとれないよ〜ん」
ドーケシが言った。

「すみません。僕がいけないんです」
ケンハピーが泣きそうな顔で言った。
「そうだ、ケンハピー悪い。キラータンポポ、シャッフルに連れてきた。タンポポ、ドーケシについた。ドーケシ、まもなく死ぬ。ルイルイ、悲しい」
ルイルイがケンハピーをせめながら泣き喚いた。
「だまれっ!」
カノンがルイルイを睨み付けると、モモに言った。

第2部−その24− に続く


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