海の母星〜

第1部 トシオ

ジァン・梅原

−その8−

コンピュータが呼びかけた。
『トシオ、またお会いできてうれしいわ。お元気?』
「やあ、無事だったかい・・・。元気にしているよ。お客さんがいるのでハシゴを下ろしてくれないか」

『下にいる娘さんね。トシオがいつも話していた人に似ているわ。でも・・・変ね。その人はもういないはずじゃなかったの。それに・・・ここは理論的じゃないわ。水ばかりだったのにいつのまにか乾いてしまったよ。トシオ、用心してね』
「わかったよ。今その謎を調べているんだ」

コンピュータの下ろしたハシゴをユウが登ってきた。
「ユウ、紹介するよ。モリサワユウだ」
トシオは部屋に入ってきたユウをコンピュータのカメラの前に立たせた。
『・・・・・』
コンピュータは黙っている。

「ユウ、探査機を出してこの星を調べてくれないか」
トシオはコンピュータに指示した。
「えっ」
そばのユウがいぶかしげにトシオを見た。
「いっけねえ、同じ名前では混乱するな・・・・、ユウ、君は今から・・・・えーと・・・・、ミネアと命名する。わかったかい」

『オーケー、わかったわ。でも、その人、あなたが話していたユウと同じだよ。失礼だけどサーチさせてもらうわ』
とたんに室内をレーザーの激しい光か飛び交い、ユウは一瞬、眩しい光に包まれた。
「お、おい、ユ・・・、ミネア、お手柔らかにたのむよ」
トシオは慌ててユウに駆け寄ったが、光は直ぐに消えた。

『ユウのサーチは終わったよ。なぜユウがここにいるか、理論的に説明することはできないけれど、この娘は確かにユウね。トシオ、ユウに会えて良かったね』
「ありがとう・・・ミネア、これですっきりしたよ」
『トシオ、探査機を出すよ』

バシューン・・。
ランチャーが発車された。
メインディスプレィにランチャーのカメラが映し出した映像がひろがった。
最初は地上に横たわった宇宙船が現れ、映像は大きくバンして島だった小高い丘がディスプレィいっぱいに写った。
ランチャーはミネアのリモコン操縦によって、大陸の西側にある渚の上を南に向かって進んでいく。
緑の草原、森、湖、高い山脈・・・、そして山がストンと落ち込んだ海岸線。
ディスプレィの下に52368の文字。
ここから約52キロだ。
ランチャーはそこから東に向きを変え、にキラキラひかる波を見ながら海岸に沿って飛んでゆく・・・・。

以下その9 に続く

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