海の母星〜

第1部 トシオ

ジァン・梅原

−その9−

ゆっくりと海岸線は左にカーブして、やがて海と陸地との境目は、泡立つ波と闘っている岩ばかりの海岸から渚にかわる。
そして、ランチャーはいつの間にか北に向かっている・・・、こちらの方に戻りつつある。

ディスプレィの下の数字はどんどんその数字を増やして行く・・・108379、80、81、82、・・・、画面の東は海が広がり、西は緑の草原、森、数本の小さな川の河口が続く、やがてランチャーは西に向かい、もと島だった小高い丘が再びあらわれた。
数字は198268・・・・。

この大陸は・・・、いや、大きな島と言えるが、周囲約200キロのほぼ丸い形をした島だった。
ランチャーはそのまま島を通り過ぎ、海の上を西に向かって飛ぶ。
どこまで飛んでもディスプレィには海しか写らなかった。

ミネアと呼ばれるようになったコンピュータはさらに3基のランチャーを発射した。
ランチャーは真っ直ぐ北へ、東へ、南へと飛んでいった。
中央ディスプレィには四分割されて、いずれも水平線が写っていた。
そして、どこまで行っても四つの画面に写っているのは水平線だけだった。

しばらくして、コンピュータが話しかける。
『トシオ、この新しい島は海の中の孤島だよ。何故ここにこんな島が出来たのか、理論的に説明できないが、でも、現実にここに島があるから・・・ここに対応するしかないね』
「・・・・・・」

『燃料がもったいないから、ランチャーは回収するね』
コンピュータの指示で、ランチャーは一斉に帰途に就く。

ミネアはさらにトシオに語りかけた。
『トシオ、テラ(地球)の救助は期待できないよ。なぜならこの星系はテラの航宙図には記録されていないし、この惑星は存在すら確認されていないからね』

「わかった、ミネア、覚悟を決めたよ。ユウと僕はこの星のアダムとイブなんだ。これからいろんなことをやらなくちゃいけないと思うけど・・・ミネア、よろしくたのむよ」

『ラジャー、先ず第5ハッチを開けるよ。ここには小麦の種子が入っているよ。203号のケースの種子がこの星の気候に合っているから、これを栽培してね』
「えーっ、ここで農業やるの」
『当然だよ、保存食なんて直ぐになくなるんだよ。それに・・・工作ロボットが沢山積んであるから・・・これを出すよ。地道に生活の基本を設計して欲しいな』

トシオとユウは手を取り合って宇宙船の外に出た。
この星での、新しい彼等の生活が今、始まった。


以下 その10 に続く

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